ポイントというものは、不思議なものである。貯めているあいだは、なんとなく心の支えになるのに、使う段になると急に惜しくなる。まるで、引き出しにしまってある「いつか使うかもしれない輪ゴム」みたいなもので、持っているだけで安心するのだ。しかし私は今回、そのありあまるWESTERポイントをついに放出し、広島駅直結のホテルグランヴィア広島に宿泊してきた。こう書くとたいへん景気のいい人のようだが、実際は「ポイントでなら泊まれる」という、いささか庶民的な事情なのである。
泊まったのは、tsudoi-4Bという部屋だった。名前からして、すでに集まりを前提としている感じがある。「つどい」と言われると、なんだか親戚一同が法事のあとにお茶を飲む部屋みたいでもあるが、実際これはなかなか珍しい4ベッドの客室である。
シティホテルというのは、だいたい2名定員でできている気がする。世の中には家族連れがこんなにいるのに、ホテルの部屋だけが妙に「仲よく2人でどうぞ」という顔をしているのが不思議だ。家族旅行になると、たいてい2部屋に分かれることになる。そうなると、子どもの組み合わせをどうするかとか、誰がどっちの部屋に行くかとか、ちょっとした会議が発生する。そしてたいてい、最後にどこかへ追いやられる人がいる。だいたいお父さんである。
しかも、そういうときに出てくるエキストラベッドというものは、どうにも「申し訳程度」に置かれている雰囲気がある。寝られないことはないが、堂々とは寝にくい。正規メンバーのベッドたちが、きちんとした顔で並んでいる横で、一台だけ「今日は私でがまんしてください」という顔をしているのである。あれに寝るお父さんは、旅行先でもどこか仮住まい感がある。気の毒だなと思う。
その点、このtsudoi-4Bはよかった。4ベッド、しかも全部正規のベッド。誰ひとり、臨時採用の寝床に回されないのである。家族全員が一つの部屋で、しかも全員が対等に眠れる。これはかなり大きい。寝る場所の平等というのは、家族の平和に直結していると思う。大げさではなく、本当にそうなのだ。
私などは、ホテルに泊まると部屋の間取りやベッドの並びを見ただけで、妙にうれしくなる性質がある。子どものころも、親に連れられて泊まった旅館で、布団がずらりと並ぶのを見るだけでテンションが上がっていた。あの「今日はここで全員寝るんだ」という感じが好きなのだと思う。修学旅行ほど大げさではなく、でも日常ではない。あの少しだけ落ち着かない感じが、私はわりと好きなのである。
しかも今回はラウンジアクセス付きである。これはもう、ポイント宿泊なのに気分だけはだいぶ上流である。ティータイムやカクテルタイムが楽しめるので、ラウンジに行くだけで「自分は今、きちんと休んでいる」という顔ができる。普段の私は、家でお茶を飲んでいても、どこか「ついでに洗濯物たたまなきゃ」という顔つきになってしまうのだが、ラウンジにいると不思議とただ座っていても許される。椅子と空間の力はすごい。
カクテルタイムには、広島の地ビールや地酒をいろいろ楽しめて、私はたいへん満足だった。こういうとき、人はすぐ「飲み比べ」という言葉を使いたがるが、私も例にもれずしっかり飲み比べた。地ビールというのは、それぞれちゃんと個性があるようでいて、数杯飲むと最終的には全部「おいしい」の一言にまとまるところが、なんだか人間らしいと思う。地酒も同じである。細かい違いを語れるほど繊細ではないが、旅先で飲む酒は、それだけで少しおいしい。景色もつまみのうちなのだろう。
朝食もまたよかった。ラウンジ会場で、ステーキやオムレツをテーブルオーダーできるのである。朝からステーキと聞くと、一瞬ひるむ人もいるかもしれないが、旅先ではそういう常識がゆるむ。むしろ「朝からステーキを食べている自分」に酔えるので、これは一種のイベントである。しかもスパークリングワインまで飲める。朝食会場で泡の立つグラスを持っていると、ただの朝ごはんが急に「優雅な朝」になるから不思議だ。家で同じことをしたら、かなり心配されるのに、ホテルだと許される。場所というのは本当に大事である。
そんなわけで、ホテルグランヴィア広島での宿泊はかなり満ち足りたものだった。広島駅直結という便利さもありがたいし、4ベッドの安心感もあるし、ラウンジでは地のものを楽しめる。家族みんなで一部屋に泊まれて、誰もエキストラベッド送りにならず、朝からスパークリングワインまで飲めるのだから、これはもう小さな平和条約みたいなものだと思う。
やはりポイントは、貯めて眺めるより使ったほうがいい。そう頭ではわかっているのだが、また次もたぶん「もったいないな」と思いながら貯めるのだろう。人間は学ばない。しかし、その学ばなさのおかげで、また次の楽しみもできるのだから、まあそれでいいのである。
ちなみに、ホテルはJR広島駅直結で良いホテルだった。ポイント抜きにもまた泊まりたいと思えるクオリティだったことは申し添えておく。ちなみに北口と南口にそれぞれ「グランヴィア」と付くホテルがあるので行かれる際はご注意ください。

