二月九日、私は朝のニュースを流し見しながら、なぜか前日の鍋の残りを温め直していた。特に理由はない。ただ冷蔵庫にあったからである。そんな気の抜けた状態で目に入ってきたのが、ソフトバンク株式会社の決算ニュースだった。
売上高は過去最高の五兆円超え。数字だけ聞くと、もう何をやっても勝ち続ける人生みたいでうらやましい。牽引役はPayPayを中心としたファイナンス事業や流通で、LINEヤフー傘下のアスクルはランサムウェア攻撃という災難に遭いながらも、メディアECは好調らしい。人生、なかなか一筋縄ではいかないのである。
モバイル事業も堅調で、ソフトバンクだのワイモバイルだのLINEMOだのを全部足すと、契約者は三千百九十六万件。数字が大きすぎて、もはや日本の人口なのか豆の数なのかわからなくなってくる。
ところが、である。直近三か月で十万件の純減と聞いて、私は鍋をかき混ぜる手を止めた。原因は「ホッピングユーザー」。つまり、ちょっと使ってすぐ去る人たちだ。昔は違約金だの手数料だので縛られていたのに、今は法改正で身軽になり、みんなフットワークがやたら軽い。
社長の「たくさん申し込む人はお断りする」という発言を聞きながら、私は昔、試食コーナーで何周もして店員に顔を覚えられた自分を思い出した。あれも一種のホッピングだったのだろうか。
結局のところ、お得を求めて動くのは人の性で、会社はそれに振り回され、国は眉をひそめる。私はといえば、今日も特に乗り換える予定もなく、鍋の残りを食べ終えただけだった。人生も契約も、なかなか解約しきれないものなのである。