無印良品週間とJQカードプレミアムデイズで博多駅(アミュプラザ)が修羅場になった日の話

たまたま休みの日になると、人は前の晩から少しだけ心が広くなる。明日は昼まで寝てやる、布団と一体化してやる、と私はかなり本気で思っていた。こういうときの私は、もう半分くらい布団の民なのである。

ところが現実はそう甘くなかった。朝、私はたたき起こされた。あまりにも急だったので、一瞬なにか大きな災害でも起きたのかと思ったが、そうではなかった。もっと家庭的で、もっと切実で、そして私にとってはかなり迷惑な用件だった。

「博多駅まで車を出してほしい」

理由を聞くと、今日はJQカードプレミアムデイズと無印良品週間が重複する特異日なのだという。特異日、と言われるとなんだか天体観測みたいで少しかっこいいが、要するに「今日はすごくお得だから行くしかない日」という意味である。しかも春休みなので子どもたちも巻き込んでのお買い物だという。巻き込む、という表現がぴったりの気がした。私も巻き込まれていたからだ。

私はお得が嫌いではない。むしろ好きなほうだと思う。スーパーで見切り品のシールを見つけると、心の中で小さくガッツポーズをする程度には、お得の味方である。けれど、お得のために人波へ突撃する勇気は持ち合わせていない。私のお得は、できれば家で完結してほしいのだ。クリックとか、タップとか、その程度の運動量で済ませたい。

それなのに、今日は博多駅前である。駅前というだけで、もう人が多そうだ。さらに無印良品週間である。しかもJQカードプレミアムデイズまで重なる。これはもう、混む要素を鍋に全部放り込んで強火で煮たような日である。

案の定、無印良品のお店は大混雑だった。私は予想していた。していたのだが、その予想はひかえめすぎた。現場の混雑は、私の想像をあっさり追い越していった。店内には、人、人、人。みんな静かに商品を見ているのに、全体としては圧がすごい。不思議なものである。無印良品というのは、見た目は落ち着いているのに、セールとなるとものすごい熱を帯びるのだ。

10%オフに加えて、請求時に10%還元。計算すると実質19%還元くらいになるらしい。こういう数字を聞くと、たしかに「今だ」という気持ちになるのもわかる。いや、わかるのだが、それにしてもあれだけ並ぶのは無印良品の強さなのだろう。あのベージュっぽい色味と、主張しすぎない収納用品と、なんだかんだ使いやすいレトルトカレーには、人を店まで運ばせる力があるらしい。たいしたものだと思う。

しかし私の頭の中では、別の計算機がうなっていた。昨日までなら楽天お買い物マラソンとSPUと楽天カードの日を合わせれば、わりと同じくらいの還元に持ち込めたのではないか。家で。ネットで。人混みゼロで。私は心の中でその理論を組み立て、ついでに口にも出した気がするのだが、妻には届かなかったようだ。

届かなかったというより、最初から採用される見込みのない意見だったのかもしれない。たまに私は、自分の発言が家庭内でうっすら字幕みたいに流れて、そのまま誰にも読まれず消えていく気がする。まあ、私も逆の立場なら聞き流しているかもしれないので、お互いさまである。

それにしても、私は昔から出不精だ。子どものころも、せっかくの休日に外へ遊びに行こうと言われると、うれしいより先に「着替えるのが面倒だな」と思う子だった。今思うと、あまり夢のある子どもではない。遠足の日ですら、行けば楽しいのに、家を出るまでがいやだった。人生のかなりのことは、この「出るまでがいや」で説明できる気がする。歯医者も美容院も役所もだいたいそうである。

だから今日も、行ってしまえば終わるのだが、終わるまでにしっかり疲れた。人込みというのは、何もしていないのに体力を吸っていく。私はただ立っていただけなのに、帰るころには一日働いたような顔になっていたと思う。実際にはほとんど役に立っていないのに、妙に疲れている。こういうときの自分は、運動会で特に活躍していないのに打ち上げだけ参加した人みたいで、少し気まずい。

お得なのは好きなのである。でも人込みはとても嫌いなのである。この二つは仲が悪い。同じ家に住んでいるのに会話をしない親子みたいな関係だ。どちらかだけ選べと言われたら悩むが、できればお得だけこちらへ来て、人込みのほうはどこか遠くへ行ってほしい。

そんな都合のいいことを考えながら帰ってきて、家の静けさにほっとした。結局、いちばんありがたいのは何%還元でもなく、人の少ない場所なのかもしれない。そう思ったが、次にまた大きな還元率を見たら、私はそれはそれで少し心が揺れる気もする。人間というのは、案外その程度のものなのだ。

ちなみに今週末まで利用できるようだ。「無印良品週間2026春|3月20日~福岡店舗&買うべき商品」「JQカード10%オフ・プレミアムデイズはいつ開催? アミュプラザ博多でお得にお買い物」行きたい人はどうぞ。私はもう行きたくない(笑)