Xを開いた瞬間に消える投稿現象に名前を付けたい

朝、歯を磨きながらなんとなくXを開いた。特に目的はない。天気予報を見るほどの気合いもなく、ニュースを読むほどの勇気もない、ちょうどその中間の気持ちである。すると一番上に、なにやら気になる投稿があった。内容はよく見えないが、文字の並びと改行の感じからして、たぶん面白いやつだと直感した。

ところがである。人差し指が「続きを読む」に向かう、その0.5秒のあいだに、画面がスッと動き、投稿は上へ消えた。代わりに知らない人のリポストと、昨日も見たような広告が現れた。私は歯ブラシをくわえたまま固まった。

この感じ、昔どこかで味わったことがある。たしか、子どものころに縁日の屋台で、すごく欲しいおもちゃを見つけたのに、母が一瞬よそ見した隙に別の子に買われたときの感じに似ている。悔しいが、誰にも文句は言えない。そもそも私がボーッとしていたのが悪いのだ。

それにしても、あの投稿は何だったのか。犬の話だったのか、仕事の愚痴だったのか、それともどうでもいい一言だったのか。分からないからこそ、妙に気になる。もう一度戻ろうとしても、どれだけスクロールしても出てこない。Xはそういうところが冷たい。

私は自分が「見られなかった投稿」にここまで執着する人間だということに、今さら気づいた。実際に読んだら「ふーん」で終わった可能性のほうが高いのに、読めなかったという事実だけで、勝手に名作にしてしまうのだ。これはもう病気に近い。

なので、この現象に名前を付けたい。「X瞬間消失現象」とか、「幻の初手投稿症候群」とか。どれもいまいちだが、とにかく名前があれば少しは気が晴れる気がする。

たぶん、世の中の半分くらいの人は一度は経験していると思う。共感してくれる人がいてもいなくても、明日も私は同じようにXを開き、同じように見失れるのだろう。それが私の日常なのである。