正月気分がまだ靴底にくっついている一月、私はなぜか「入場無料」という言葉に吸い寄せられて、博多の海のほうまで出かけることにした。目的地はマリンメッセ福岡である。家づくりの展示会だと聞いていたが、正直に言うと、私はいまだに自分がどんな家に住みたいのか、よく分かっていない。
会場に入ると、キッチンだのトイレだのが、これでもかというほど並んでいた。どれも立派で、我が家の年季の入った流し台が急に申し訳なさそうな顔をして頭に浮かぶ。人間、見なければ平気なのに、見てしまうと欲が出るのである。
そういえば昔、実家のリフォームで父が「床は一生モノだ」と力説していたのを思い出した。結果、選ばれた床は一生モノというより、一生ギシギシ鳴る床だった。展示されている最新の床材を踏みながら、父のその後の沈黙を思い出し、私は一人で勝手に納得していた。
会場のあちこちには、脱炭素だのGXだのという、ちょっと賢そうな言葉が並んでいる。説明を聞いているうちに、分かったような分からないような顔をしてうなずく自分がいた。たぶん係の人は、私の理解度など最初から期待していないのだと思う。そう思うと気が楽だった。
それよりも私の足を止めたのは、パンとドーナツである。住宅の未来より、今日のおやつに心が傾く自分が情けないが、空腹には勝てない。展示会なのに、なぜかカフェ気分である。
主催が越智産業株式会社だとか、出展が100社以上だとか、すごい数字はたくさんあった。でも結局私の頭に残ったのは、「入場無料でパンが買える」という事実だけだった。
家づくりの未来を考えるはずが、今日の晩ごはんのことを考えながら帰路につく。まあそれも、私なりの住まいとの向き合い方なのだと思うことにした。
開催は15日~16日です。
詳細:アイラブホームフェア2026|福岡・マリンメッセで1/16・17開催!入場無料の住宅設備展示会
