ある日、私は「年間5,500円」という数字を見て、ふむふむと一度は真面目な顔をした。次の瞬間、「それが990円です」と書いてあるのを見つけ、顔がゆるんだ。人は値引きに弱い生き物だと、改めて思う。特に私のような庶民は、割引率が80%を超えると、もう思考力がなくなる。
楽天マガジンは、雑誌が2500誌以上読み放題になるサービスである。私は以前使ったことがあるが、正直に言うと、全部を読む気など最初からない。ただ「いつでも読める」という状態が、なぜか心を豊かにしてくれるのだ。
自分では絶対に買わない雑誌を、そっと開いてみる。男性誌を女性が読むとか、女性誌を男性が読むとか、普段ならしない行動をする。これといって人生が変わるわけでもないが、「へえ」と思う瞬間がある。それだけで、なんとなく得した気分になるのである。
今回のキャンペーンは、年額990円。ひと月あたり約83円。もはや雑誌代というより、駄菓子代である。しかも初回31日無料。気に入らなければやめてもいい、という逃げ道まで用意されている。ここまで親切にされると、逆に疑いたくなるが、疑っても安いことには変わりない。
さらに条件を満たせば100ポイントも戻ってきて、実質880円らしい。実質、と言われると一瞬考えるが、結局「安い」という結論に落ち着く。人間の判断とは、だいたいそんなものだ。
雑誌を読んだからといって、急に知的になるわけでも、仕事ができるようになるわけでもない。ただ、ソファでだらだらする時間に、ちょっとした言い訳ができる。それが私にとっては十分だった。
どうせまた全部は読まない。でも「読める」という可能性を990円で買うと思えば、まあいいか、と思うのである。人生もだいたい、そんな軽い納得で回っている。
